アイス
理由も聞かずに
甘いもので済まそうとするから
喜ぶふりだけして
あの人が帰ったあとに
安っぽいアイスをシンクに放り投げて
溶けるのをじっと見る
私の好きな人は
台風が過ぎた後のような
予定調和がいつまでも続くものだと
信じきっている
かげぼうし
放課後の校庭であなたは一人立ってる
右手には宛名のないメモ書き
わたしは二階の窓辺から手を伸ばし
延びた影越しにあなたの頬をそうっと撫でた
怪訝そうにこっちを見上げたから
咄嗟にわたしは口を押さえてうずくまり
初恋のおわりを噛み締めた
浮かぶ
昼下がりのスーパーで
品物を吟味する人達
その頭の中にプカプカと
浮かぶ幸せの意味を
どれだけの人が知るだろうか
あたらしい
トイレから戻ると
妻の側で次男が泣いていた
「何かほしいものでもあるのか」
「新しいお父さんがほしい」
「こら そんな事 子供が言うもんじゃ
ありません」
あにばなれ
「あれ?」
さっき弟と電話してて アイツひと言も
「お兄ちゃん」
って 言わなかったぞ
これは 夫婦がパパ、ママ呼びをして
名前で呼びあわなくなる現象の反対か?
ん? アイツ何で呼び捨てだったんだ?