水色のばあさん

 また水色のばあさんが現れた

 市役所のロビーには 昼間から

 用もないのに高齢者が溜まっている

 一見すると市民病院の待合室だ

 「どうされました?」

 分かってんだ 

 町内会の詩吟サークルの揉め事だろ 

 「私はいいんですけどね」

 そう語尾につけたがるこの人は

 数年前まで母校の教頭をしていた

 初めて対応した時 私の吊り下げ名札を

 まじまじと見られた時にゃ 

 「分かりました」

 何も分かってないことが 分かったことを
  
 分かったことにする不思議な言葉

 おそらく 心療内科の先生も

 ご愛用されていることだろう

 どーせ明日も来んだから

 仲直りするまで

 先生は学級会を続けたのに

 あくびを噛み殺し 腹を減らした

 その他大勢が今も割りを食う

 入り口に統合失調症の新人の姿

 昨日にひき続き 財布を落としたのだろう

 セルフスタンドで

 レギュラーを無限に給油するイメージ

 アクリル越しに頷きながら