黄金じゃない日々
「あ~ 先輩いま」
「え 何?」
「さっきGW の予定聞いた時」
「出る予定ないって言ったよ」
「で 連休中 天気悪いって言ったら」
「え 何?」
「ほらね って顔しましたよね」
見える景色
「はあ」
意味の分からないため息
後ずさりしながら がらんどうを見渡す
ふるさとを捨てる
「はあ」
震えている そのまま
「いってきます」
ただいまは永遠に来ない
何かに祈るように 気持ちにも鍵をかける
からっぽ
フロントガラスの雨粒は
赤や黄色 ときどきみどり
一粒一粒の世界に気づけない
助手席がからっぽの帰り道
誰にでもいつかはやってくる
「ピンポーン」
誰だ 朝っぱらから
呼び鈴は更にしつこく鳴り続ける
「ピンポーン ピンポーン ピンポーン」
残業を終えて あと数時間で出勤なのだ
「ピンポーン ピンポーン ピンポーン」
だんだん頭が痛くなってきた 身体ひきずり
目を血走らせ 玄関ドアを乱暴に開けた
「やあ」