2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ネコだと思った

「ネコだと思った」 カナダの山奥で少女が子ネコを拾った 家に連れて帰ると 数年で大型犬より大きくなった 実はそのネコはカナダオオヤマネコで 少女とその家族は喰い殺される 隣で寝ている君を見る度 この話を思い出す

あくま

バッテリーはとうに寿命を迎え 常に点滴に繋がれた老人のようだ そのくすんだ傷だらけの身体が どんなに熱く膨張しようと その心臓をタップしながら 「俺?Mかなぁ。」 にやけた顔でUberを手配する

イチゴ

渡された花束は 女の香水の匂いがした 事実の重さで ゆっくりと私の意識は後ろに倒れていく 味のないイチゴを食べた時のような 吐くに吐けない でも飲み込めない このまま私の意識も イチゴのように潰れてしまうだろう

かに

玄関を開けると おめかしした妻が待っていて 「今日は外食したい」 と笑顔で言う 断る理由もないので 鞄を放り投げ 二人並んで歩きだす 「蟹がいいな」 「また?好きだね」 いま思えば妻の目は笑っていなかった

字は色づく

窓ガラスを叩く雨粒が 影になり机の紙に流れていく ふいに顔を近づけ 顔でもなく声でもなく指でもなく 字を褒めた あなたに褒められた字で 離婚届にサインした

お月様

夜道で月を見上げるように ぼんやりと付けたドラマ 貧乏でどん底の主人公に 共感できないは 彼女の服やバッグがブランド物だから ではなくて お月様だから

紙ヒコーキ

スマホをテーブルに置き 素足で どしゃ降りのベランダへ出る せっかく作った前髪も 顔に張り付いて視界を塞ぐ 柵から地表を見下ろすと 雨に打たれる白い紙の山 それは雨を含んで膨らみ うずくまって泣く私の形となった 彼に投げた幾千の紙ヒコーキは この雨…

アイス

理由も聞かずに 甘いもので済まそうとするから 喜ぶふりだけして あの人が帰ったあとに 安っぽいアイスをシンクに放り投げて 溶けるのをじっと見る 私の好きな人は 台風が過ぎた後のような 予定調和がいつまでも続くものだと 信じきっている

かげぼうし

放課後の校庭であなたは一人立ってる 右手には宛名のないメモ書き わたしは二階の窓辺から手を伸ばし 延びた影越しにあなたの頬をそうっと撫でた 怪訝そうにこっちを見上げたから 咄嗟にわたしは口を押さえてうずくまり 初恋のおわりを噛み締めた

浮かぶ

昼下がりのスーパーで 品物を吟味する人達 その頭の中にプカプカと 浮かぶ幸せの意味を どれだけの人が知るだろうか

あたらしい

トイレから戻ると 妻の側で次男が泣いていた 「何かほしいものでもあるのか」 「新しいお父さんがほしい」 「こら そんな事 子供が言うもんじゃ ありません」

あにばなれ

「あれ?」 さっき弟と電話してて アイツひと言も 「お兄ちゃん」 って 言わなかったぞ これは 夫婦がパパ、ママ呼びをして 名前で呼びあわなくなる現象の反対か? ん? アイツ何で呼び捨てだったんだ?

黄金じゃない日々

「あ~ 先輩いま」 「え 何?」 「さっきGW の予定聞いた時」 「出る予定ないって言ったよ」 「で 連休中 天気悪いって言ったら」 「え 何?」 「ほらね って顔しましたよね」

仙人掌

同僚の机の 小さなサボテン 「話しかけたら トゲがなくなるらしい」 昼休み 日当たりのいい席で霧吹きを手に せっせと話しかけている だが トゲは鋭くなるばかり 同僚は今日も テキーラ臭い